4月ももうすぐ終了して、来週はゴールデンウィークに改元です。平成の最期の月、受験生たちはデッサンをしています。デッサンはすべての基礎となります。ものを把握する姿勢を身につけるのが、デッサンの最大の目的です。そのためデッサンは、必然的に思考の過程そのものとなります。自分が対象=モチーフをどのくらい把握しているのか、デッサンを描く過程で分かってきます。「描けない」という壁に突き当たったとしたらそれは、自分がそこまでしか把握できていないことを示しています。分からないものは描けないからです。
把握するためには当然、理解しなくてはなりません。考えることは同時に、観察することであり、手を動かすことです。そういう全過程が、「デッサンで思考する」姿勢となってきます。何かを作りたい、いままだない、頭のなかにだけあるものをイメージして、それを形にしようとするとき、デッサンが必要になるのです。形のないものを具現化させる、描くことで、まだ存在しないそれを把握していく。デッサンはそういう、思考過程そのものです。
受験でデッサンが科される背景には、そういうデッサンの思考を会得してもらいたいという願いがあります。うまく描くことよりも大切な、思考のツールとしてのデッサンを理解していて欲しい。その扉を開けるため、毎日デッサンしているのです。将来クリエイターとして活躍していくために、最も必要なことなのです。