怖い絵展に行く

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現在、上野の森美術館で開催されている、怖い絵展に行ってきました。
解説と監修は、ドイツ文学者でもある中野京子さん。「怖い絵」シリーズなどの著作で知られる方です。
人の根源的感情のひとつに、恐怖があります。危険・不安・嫌悪、さまざまな感情を伴っている「恐怖」「怖さ」。それはほんらい、忌避したい負の感情であり、怖い思いなどしたくはないはずです。けれどもそれは同時に、「不安を伴う魅惑」を喚起もします。怖いもの見たさの感情。ホラーやサスペンスに代表されるようなスリリングさは、怖さを愉しむ感覚なのです。
さて、絵画における「怖い」とは、どんなものでしょうか。ミケランジェロの「最後の審判」に代表されるような宗教的恐怖から、中世の「死の舞踏」のような恐怖、ムンクの「叫び」のような、個人的・内面的な恐怖。さまざまな恐怖を思い描けることでしょう。
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今回「怖い絵」の代表として展示されている、ジェーン・グレイの処刑は、その写実的なリアリズムで、見るものを圧倒します。エリザベス一世即位直前、政争に利用され巻き込まれた、若き女性の処刑の様子は、哀れみと悲しみを誘う主題である以上に、その迫真性によって、見るものを恐怖に陥れます。エドワード六世死去をめぐる陰謀と政争、そしてシェーン・グレイの処刑については、英国史にゆずるとして、、絵画に描かれたそれは、まさに処刑されようとしている若い乙女の悲劇を、映画の一コマのように描き出しています。最期まで宗教的信条を曲げず、恐れにも屈せず、平静に諸兄に望んだというジェーン・グレイ。目隠しをされて、断首のために用意された台を探して、手を伸ばし、その手を導かれている女性の悲壮感は、恐怖を感じさせずに入られません。
画家はその演出のため、実際に処刑されたロンドン塔の上の部屋ではなく、地下室のような場を設定しています。純白のドレスもまた、穢れなき女性像を効果的に引き立てていますし、惨劇を予知させるのに十分です。倒れこみ茫然自失としている侍女とともに、これから起こる悲劇を劇的に描き出しています。処刑後、4時間に渡ってそのままにされ、覆われることもなく、晒された、と言いますが、いつの世においても、処刑とはつまり、同様の企てを阻止するために、恐怖を与える効果があったのだろうと想います。

怖さの中に、教訓を込めたり、訓戒を説いたりする絵画作品も多いのですが、やはりそれ以前に、恐怖に対する抗いがたい魅力もまた、底流としてあるのだろうと思います。
「怖さ」は美術史のなかでも常に傍流としてありつづけています。今回の展示は、怖さをめぐる主題の作品を集めた展示です。展示の切り口として面白く、関心を集められる展示になっています。


by seibi-seibi | 2017-11-07 15:36 | 人と絵と、イメージ | Comments(0)


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