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ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展にいく

夏休み。
この自由な時間を利用して美術館に出かけましょう。
現在、世田谷美術館で
「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」
会期 6月28日から9月15日
が開催中です。
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明治維新で世界への扉を開いた日本。
数世紀にわたり鎖国にあって、その文化がなぞに包まれていた極東の島国「ニッポン」の美術は、惹きつけてやまないエキゾチックな芸術として、西欧の人々を魅了し、受け入れられたのでした。
日本画・浮世絵といった絵画作品はもちろん、サムライ・芸者といった、日本のさまざまな生活や習俗が紹介され、西欧の人々は、遥かかなたで独自に発達した文化ぜんたいを「ジャポニスム」という言葉で表現したのです。
今回の展示では、ボストン美術館に収蔵されている、日本の浮世絵や工芸品と、それに影響された油彩・工芸・織物などを並置して展示しており、西欧における日本文化の受容の過程が理解できます。
浮世絵に表現された日本の景色。大胆で劇的な構図。巧みな多色刷り技法。そのどれもが、西欧の画家たちを刺激する因子となったろうことは、容易に想像できます。なにか新しいもの、異なったものにたいして敏感な芸術家の前に現れた、「非ヨーロッパ」的な絵画から、インスピレーションを感じ制作された、ゴッホやモネの油彩には、ただの模倣ではない、彼ららしいアプローチや解釈が感じられます。
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浮世絵には、その一瞬の出来事の前後関係が凝縮されていて、見るものを飽きさせません。
橋を渡っている人たちに打ち付ける雨。
夏の夕暮れなのでしょうか。あたりに暗く垂れこめた黒雲に、岸向こうはかすんでいます。
突然、どっと降り始めた豪雨のなか、ひとつの傘に身を寄せて歩く人、裾をあげ、傘をすぼめて急ぐ女。
驟雨におどろき、先を急ぐ人々のようす、その時間が、この一枚の中から如実に感じられるのです。まるで映画のワンシーンを切り取ったような物語性を感じさせる秀逸な版画に出逢った、当時の西欧の人々の驚きがどれほどだったか、想像に難くありません。ゴッホによる広重の模写を併置して見てみれば、その衝撃の深さを理解できます。
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文化の大きな違い。それが隔壁となり、誤解や偏見を生み出してしまえば、不幸な争いへと向かってしまいますが、異文化を興味の尽きないものとして捉え、そこから豊かな想像力を生みだす源泉を見いだせば、双方の文化とも豊穣な収穫を得られる。ジャポニスムによる日本文化の影響は、異文化交流のすばらしい結果であったろうと思います。



by seibi-seibi | 2014-07-26 10:58


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