カリグラフィーをめぐって

f0234596_9471662.jpg

 デザインや平面構成を制作するとき、アィディアの源泉となるような資料を探す必要がでてきます。これはプロのデザイナーも同様でしょう。自分にイメージを与えてくれるような絵やイラストなどの試料を探すのには時間もかかります。美大受験生たちにとっても、資料収集は頭の痛い問題です。
 今週、グラフィックの平面構成の資料として、ウィリアム・モリス作品のコピーを持ってきた生徒がいました。コピーで持参してきたのは、モリスの作になる装飾的な文様と、ケルムスコットプレスが出版した本の一ページ。おそらくは雑誌に掲載されたものでしょうか。装飾文様の壮麗さと、それにあしらわれたアルファベットの美しさに惹きつけられているようでした。そこでモリス作品の魅力の話題になったのですが、「モリスのような作品や、その類例を集めてみたい」という話になりました。
 アートアンドクラフト運動の指導的立場にあったモリスは、手作業で仕上げられてきた、かっての手工芸や飾写本の美を再発見し、それらの持つ、独特な美しさを再評価し、甦らせた人物です。産業革命以降の機械化されていく社会の中で、忘れられつつあった手作業の素晴らしさを、過去の作品の中から採集したのです。実際モリスがどのような手続きで資料採集したかはわかりません。けれども、当時現存していた写本や、染織などを実際に見聞して、そこから描き起こしただろうことは想像に難くないと思われます。このような資料は、ヨーロッパの図書館、わけても長い歴史を持つ図書館などに保管されています。もっとも有名なのはオックスフォード大学に付属するボードリアン図書館でしょうか。12世紀の創設以来、蔵書の貸し出しを一切拒んできたこの図書館には、貴重な写本類が多量に残されています。古文書としての学術的意義については碩学に譲るとして、文字のデザイン、カリグラフィーの美しさをみるには第一級の資料を提供しています。また大英図書館
にも、同様の資料が存在します。
f0234596_9475824.jpg

そんな中でも一番の白眉と思えるのは、ダブリントリニティカレッジにある
ケルズの書(PDF)でしょう。ケルト写本の中でも、その壮麗さにおいて見る者を眩惑させずにおかない美しさ。書物と文字による造形の、おそらくは人類史上もっとも美しい結晶。ケルズの書にはそのような賛美がふさわしい。
 イギリス人であったモリスも、おそらくは知っていたたろうこれらの写本群のなかに、デザインの源泉となるイメージを探ったのでしょう。それをイメージの資料として集積し、味わい、ストックしておく。これからデザインを続けていく上で大切なことに、美大受験を契機に着手してほしいとおもうのです。
by seibi-seibi | 2010-10-14 07:38 | デザインするって? | Comments(0)


<< 最終志望決定。面接中。 紙立体 >>