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目を細めるレンブラント

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なかなか忙しく、ゆっくりと本を読める機会が少なくなりました。
学生時代、時間の許す限りゆっくり、本に目を通せる、
それがどのくらい貴重な体験であったのか、
日々雑務に追われるようになってはじめて気づきました。
そんななかでも、なんとか読み続ける時間を探しつくりだして
読み続けるようにしています。
というわけで、今日は本の話。
最近読んで、興味深かった本を紹介します。
題名は「芸術か、人生か!レンブラントの場合」ツヴェタン・トドロフ著 みすず書房
17世紀オランダを代表する画家、レンブラントについての本です。
著者トドロフは、「文学と意味作用」で知られる、記号論学者・哲学者・批評家です。わたしにとってトドロフといえば、『象徴表現と解釈』『他者の記号学』を記した記号論者という位置づけでした。ロシア・フォルマリズムの紹介から始まったかれの思索は、それから数十年の時を経て、最近では美術史的アプローチにも広がっていたのでした。その底流に流れているのはトドロフの「個」と「他者」についてのまなざしであるのは言うまでもありません。
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トドロフはレンブラント作品と、作者の背景にある日常生活との関連を軸に考えていきます。作品を作りだした画家=芸術家はまた、その時代を生きた個人でもあるのです。レンブラントも、人の日常生活に起こるさまざまな事件、誕生や死、病気や出世などを経験したのです。美の深遠な奥底を探求し、真理を見出そうとする芸術家としての営みも、「日々の糧」なしには成立しえない。芸術活動と日常生活、この分かちがたく、けれども相反するように見える二つの事柄をレンブラントはどう捉え、どのように和解したのか、トドロフは資料と作品を参照しながら検証していきます。
芸術活動は、日常生活からは遊離した、「世間はずれ」した側面を持っています。日々ただ生活するだけでは見出せないような、ある意味特異な世界を突き詰めること、その作業を抜きにして「作品」は生み出されません。作者となった者は、自己と向き合い追求し続けなくてはなりません。その結果として世事に疎く、ある意味で尊大でエゴイスティックな生きかたを選択してしまう。現代の芸術活動においても、多くの人が直面する問題かと思います。
「人が人生と呼んでいるものの多くを犠牲にして、世界の秘密を探り当てること、そのためにはたとえ友達がいなくなろうが、自己中心的になろうがやりきっていく。芸術家の生き方には、そういう方法しかないのか」トドロフは問うてみます。そしてレンブラントの場合はどうだったのか。原題はL`ART OU LA VIE! LE CAS DE REMBRANDTですから、芸術か生活か!のほうがしっくりするかもしれません。トドロフがどのように結論づけているのか、それは皆さんで読んで、じっくり考えてほしいと思います。
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またこの書物でちょっと気になった部分があります。レンブラントの弟子の一人であった、ホーホスララーテンが伝えているレンブラントの言葉の部分。「弟子たちにモデルを見るときは目を細め、細部に注意を奪われることなく、深い同一性をつかむよう」に教えたというくだりです。トドロフはこの教えを「レンブラントの見えるものについての特別な考え」の表れであるとし、それは、「見たものの境界線に捉われて表面のみを捉えるのではなくて、内面を捉えること」にあったとしています。「目を細める」ことを通して、レンブラントがモデルの表面に現れたものよりむしろ内面、人物の実相に対して洞察しようとした、という論旨は、少しばかり深読みのように感じられます。
じっさいにデッサンの指導をしていると「目を細めて見てみよう」ということがよくあります。
それは、モチーフの内面に接近する-作者の精神的な洞察-ためではなくて、
単純に、コントラストを高めるためです。
デッサンをしていれば気付くことなのですが、ずっと一つのモチーフを見続けていると、陰影の大きな差、おおまかなコントラストが分かりづらくなってきます。どうしてかというと、人の目が、その陰影の差に対して自律的に調節して、もっともよく見えるよう網膜が働くからなのです。ピントを合わせるのももちろんですが、光の量も同時に調節しているのです。急に暗い所に入っても、数分でまわりがみえるようになる、あれです。これはカメラの適正露出と同じしくみなのです。見えやすくするのが目の大切な働きなので、生きるうえではそれでいいのですが、絵を描くとなるとちょっと困るのです。時間が経つにしたがって、最初に見たときのコントラストが分からなくなるのです。
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これを補正するのに、もっとも手っ取り早い方法が、目を細めることです。薄目にしてみるとコントラストが上がり、「本来の」陰影の差が見えてくるのです。おそらくレンブラントもこの目の持つ特性を理解していたのでしょう。特に陰影を強調して描く、「レンブラント」のような画家には、非常に大切なことであったろうと思われます。石膏などをデッサンしていて、「離れて見よ」「目を細めて見よ」と言われているとき、それはレンブラントも発していた、特に大事なコントラストの確認法、ヴァルールの確認法を指導されているのです。こうして考えてみると、デッサンって、もう数百年も変わらないものなのですね。
by seibi-seibi | 2012-04-17 16:54 | 人と絵と、イメージ | Comments(0)

新学期開始しました

2012年度一学期開始しました。

ただいま新入生募集しております。
惜しくも浪人してしまった方、
高3生で、これから受験をお考えの方、
どしどしご連絡ください。

受付時間は12時から8時までになります。
by seibi-seibi | 2012-04-09 13:16 | Comments(0)

新学期生募集中

春期講習も終了し、現在セイビはお休み期間中です。
授業開始は4/9 月曜日からとなります。
4/4から4/7まで、新学期の受付等のための
事務を行っています。

去年、受験生全員が合格しましたので、
セイビで残る「浪人生」は一人もいません。
もし、ことし一年で、美大生になりたい、
惜しくも浪人してしまった方で、
この、小規模なセイビでがんばりたい人、
もしこれを読んでいましたら、
おいでください。

少人数でもブレずに頑張れる、
やる気がある方であれば、
かなりの確率で、
一年で「美大生」になれると思います。
来週から始まりますが、
途中からでも一度、覗いてみてください。
by seibi-seibi | 2012-04-04 18:00 | Comments(0)