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創りだすこと 3

前回の最後で、モチーフは描く人に対して「抵抗」してくる、と書きました。
そして、描くにあたってこの「抵抗」に対して、素直な観察力と、謙虚な姿勢だろうとも書きました。抵抗と書くと、なんだか敵意のあるような、物騒な対峙が思い浮かぶかもしれません。
この抵抗という言葉、私はある書物から借りてきて用いています。
その書物とは、アントワーヌ・ド・サン=テクジュペリの「人間の土地」という小説です。
「星の王子さま」でつとに有名なサン=テグジュペリの記したこの書物の冒頭で「抵抗」という言葉を用いています。
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 ぼくら人間について、大地が、万巻の書物より多くを教える。理由は、大地が人間に抵抗するためだ。人間というのは、障害物に対して戦う場合に、はじめて実力を発揮するものなのだ。もっとも、障害物を征服するためには、人間に、道具が必要だ。人間には、鉋が必要だったり、鋤が必要だったりする。農夫は、耕作しているあいだに、いつかすこしずつ自然の秘密を探っている結果になるのだが、そうして引き出したものであればこそ、初めてその真実の本然が、世界共通のものたりうるわけだ。・・・・

「人間の大地」のこの書き出しは、デッサンする上の姿勢においても、示唆に富んだ言葉だろうと思います。何かを探求するとき、その相手はなかなかその真実の姿を見せてはくれない。というよりむしろ、その姿を晒すことなく、すり抜けていこうとする。デッサンでも、そういう「すり抜けられる」瞬間を感じることがあります。捉えたつもりでいて、捉えきれない。こんな瞬間において、ひとはモチーフを、本当は観察しきれていない、描ききれていないことを思い知らされるのだと思います。そういった「抵抗」があると思うのです。
そんなとき、どこまで主観を排して見つめなおせるか。
モチーフをまっすぐに受け止め、素直に観察しなおすなかから、モチーフ本来の姿・カタチがわかり見えてくると思うのです。
ものづくりの、創りだすこと、そのたち顕われる現場において「素直」な目でいられること。これは大切でしょうし、それが作り出すという行為の底流にあり続ければ、創りだされたもの「作品」も、おのずと良い仕上がりとなるのではないでしょうか・・・。 つづく。
by seibi-seibi | 2011-04-28 19:36 | Comments(0)

「創りだすこと」について 2

「創りだすこと」について。
たとえばデッサンをめぐって。
絵を描くというのは、結局、モチーフを見て、それを引き写すということです。
どんな解釈をするにしても、良く見て、そこから描くことが基本・根幹になっていると思いますが、いかがでしょうか。モチーフが前提としてあって、それを見て描く。子供から大人まで、巧拙の差こそあれ、その姿勢は変わらないと思います。
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デッサンなど、描いていると分かりますが、思ったよりも上手くいかず、なかなか描けない、皆さん一度は、最初、そういう経験をすると思います。そうすると「なぜ描けないのか」とか「どうしたら上手く描けるのか」と考えるようになります。その解決のために、スケッチしてみたり、描き方を変えてみたりする。それでもすぐには上手くいかない。
そういう時、それはつまりモチーフのありようを、そのまま等身大で理解していないことが多いようです。たとえばりんごを描くとして、りんごをそのまま、はじめて見るかのように素直に見ていれば、おのずと絵がモチーフに接近してくるはずです。もし何か、先入観を持っていて、それがズバリあっていればいいのですが、自分の捉え方に傾いていて、すこし理解が独りよがりだと、自分の考えるりんごが描けてしまいます。
つまりそれが「モチーフを見ているか」「ちゃんと観察しているか」ということなのでしょう。モチーフは、先入観に彩られたわなを仕掛けてきます。わたしはそう考えています。人の観察力を試し、なかなか巧妙にすり抜けてしまう。そうして、人を困らせるのです。デッサンを描いているとき、モチーフは私たちに真の姿を見せないように、「抵抗してくる」のです。私はそう考えています。
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 この「抵抗」に対抗して、本当のモチーフのありように接近するには、何より素直な観察力と、謙虚な姿勢だろうと思います。上手く描こうといった最も烈しい誘惑をしりぞけ、ありのままのモチーフに対峙していくことの中にこそ、デッサンの醍醐味があるのだろうと思います。
ここで何度かあがった「素直」「謙虚」。ものを描き、創りだしていくことの根底にはこの姿勢が大 切なのではないかと、考えています。絵を描いて、デッサンを描いて、モチーフから素直に学べて、そこに面白みや楽しさを見いだせれば、それでいい。また、この謙虚で素直な気持ちを抱きながら「創りだすこと」が、一番大切なのではないかと考えています。つづく。
by seibi-seibi | 2011-04-25 16:12 | Comments(0)

「創りだすこと」について

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人間は「モノ」をつくりだす存在である。
この、人間がつくりだす能力、つまり創造性について、
わたしは、考えています。
3月11日以降とりついて離れないのは、このことなのです。
しばらくのあいだ、不定期にですが「創りだすこと」について考えてみたいと思います。
美術研究所にいて、毎日、何かしらつくりだす現場にいる者として、
いま、このことを考えなくてはならないときなのでしょう。

ほかの生物と人間を隔てているものの一つである「創造性」。
人という存在は、ただ生きて、死んでゆくことなどできず、
つねに何かを創りだしてきました。
もうそれは宿命といってもいいほど切り離せない行為なのです。
言われなくても、強制されなくても、
モノを考え考案し、つくり、改良を重ねる。
人間の歴史は、この創りだすことの歴史であったといっても過言ではないと思います。

この創りだすことの原動力である「創造性」は、
人間の善意に根ざしている。
換言するならば、創造性という言葉は、
人間は必然的に、良いものを創りだす、
という暗黙の了解を含意している、と思うのです。
たとえそれが利便性や合理性、快適さの追求であったとしても
基本的には、それを支えているのは善であろうと、考えてきた。
しかし、今回の一連の災厄のなかにあって、
その善なものの背景に隠れていた、悪なるものが見えてきた、
いや、見えてしまったと思うのです。
現在進行している原発の事態を見ていると、
人間が良かれと考えて創りだしたものが、
いつの間にやら不幸にも、
危険なものに取って代わってしまったと感じるのです。

性善説でくるまれていた「創造性」が逸脱して、
歪んだ形で発現してくるのを目の当たりにしたとき、
人間のやってきたこと、作り出したものに疑念が生じるのは当然のことです。
そんな事態の渦中にあって、
それでも人間の創造性に信頼を取り戻すためにも、
創りだすことについて考えなくてはいけないと思うのです。
数百万年前、たった一つの磨製石器を作り出した人間が
物質の構造を操作して恩恵を得るまでに至ったのです。
この人間という生物、努力し思考していく生物の、
これからを、創造性抜きには考えられないのであれば、
創りだすこととは、いったい何なのでしょう。
皆さんも、ぜひ、考えてみてください。
by seibi-seibi | 2011-04-21 16:04 | Comments(0)

若葉の頃

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桜が散ったと思ったら、いっせいに芽吹く若葉たち。
文字どおり「萌えいずる」季節が到来しました。
若葉色のイチョウの新芽が、空に向かって、大きく手を拡げるように顔を出し、それはもう、一年で一番美しい光景かもしれません。春風を受け、陽光にたなびく若芽たちは、日々刻々とその色彩を変化させていきます。あと一週間もすれば、薄い灰色の緑から、しなやかで濃く、しっかりとした新緑へと変わっていきます。毎日移り行く色彩に、来るべき夏の気配を感じる、そんな素敵な季節です。
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こちらはセイビの庭先に咲いている佐藤錦の花です。さくらんぼの花は、桜に似ていますが、微妙に違うようです。
by seibi-seibi | 2011-04-19 14:57 | Comments(0)

一週間目 終了

一学期の一週間が、あっという間に終了しました。
初めての生徒も多くて、まずはアトリエに慣れる一週間でしょうか。
夜間、毎日通うだけでも、大変なはずです。
ゴールデンウィーク明けには、慣れてきて、
お互いの距離も縮まってくることでしょう。

今週はまだ、余震が続く日々でした。
ぐらっとくるたびに、身構えることが何回あったか・・・。
速くこのゆれもなくなり、落ち着いて過ごせるようになることを
祈っています。
by seibi-seibi | 2011-04-15 21:00 | Comments(0)

2011年度開始しました

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今日から2011年度一学期が始まりました。
それに合わせたかのように、成城の桜も満開です。
今年度がどんな一年になるのか。
満開の桜の木の下で、薄桃色の光を浴びながら、
しばし思いにふけっています。
by seibi-seibi | 2011-04-11 16:50 | Comments(0)

来週から一学期始まります

来週月曜、4月11日から、2011年度一学期が始まります。
昼間部も夜間部も、月曜から元気にはじめましょう。
桜も満開になって、やっと春らしい暖かさになってきました。
来週は花吹雪の舞うなか、始業となるのでしょうか。
by seibi-seibi | 2011-04-08 16:54 | Comments(0)

卒業生の展示がやってます

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一昨年の卒業生の展示が、下北沢で行われています。
作品が販売できた場合は、東日本大地震の援助金として
全額寄付するそうです。

なるみ展

会期 4月6日~4月10日
場所 ギャラリー おばあちゃんの家
住所 世田谷区北沢2-27-15
   下北フラット1階
電話 090-5440-8893

大学に入って一年。初めての展示です。
タマビ・ムサビなど、大学は違えど、みんなセイビの同期のようです。
自分たちで考えて、自主的に動き活動する。
ただ大学にかよって、授業聞いているだけでははじまらない。
やっと、そのことに気づいたのでしょう。
初めての展示で、分からないことも多かったと思いますが、
それも活動していく中で、学んでいってほしいと思います。

場所は小田急線下北沢駅 北口から徒歩3分。
   井の頭線下北沢駅 西口から徒歩2分 くらいだと思います。
時間についてはギャラリーにお問い合わせください。
by seibi-seibi | 2011-04-05 17:38 | Comments(0)

2011年度 新学期へむけて

2011年度春期講習も無事終了し、4月11日からは新年度授業開始となります。
先月は震災から、引き続き発生した災厄で、先行きの見えない日々が続きました。
ここであらためて、震災にあわれた方々、いまもまだ避難を余儀なくされている方々に、お見舞いを申し上げます。
数百年、いや千年に一度あるかないかという自然災害を前にして、何より感じるのは人間の無力感と無常感です。それでも何かしなくてはいられなくなり、落ち着かない日々が続いています。それは皆さんも同様だろうと思います。「言葉にならない」ほどの不幸を眼前にして、人々の連帯感・相互扶助の精神が、こんなに前面に顕われるのを目にし、感じるとき、人間本来の強さと優しさを感じています。
前にも書きましたが、セイビでは震災の影響もなく、また、計画停電にも該当せず、新年度も通常通り開始する予定です。4月から6月までは、いつもどおりで授業していけると考えていますが、7月からの電力ピーク時には、停電もありうるだろう、と考えています。その場合は、セイビで用意してありました自家発を使用することになろうかと思います。暑ければ井戸水も復活させます。そう、井戸もあるのです、実は。夏のクーラーを止めるくらいですめば、夏はそれで乗り切れるかと思いますが、冬の寒さはどうにもなりません。もし、冬になって停電の可能性の場合は、セイビはその当初に使用していました、石炭ストーブを使用しようかと考えています。これはこれで趣があっていいのですか、薪割りは必要になります。これもまた、慣れれば面白いものです。
この際、少しむかしの、まだ不便だけれど、それはそれで楽しかった頃の器具を使うのも悪くないかなと思っています。火を熾して焚いたストーブのまわりで芸術談義する、そのほうが人間的なようにも思います。
人間の利便性を第一に追求して、それを経済活動のキーワードにし、邁進しつづけた、その結果過剰なエネルギーを消費してしまう仕組みを作りださざるを得なかった、その果てに待っていたのが、今回の災厄であったのではないか、と、かんがえています。それを必要とし、つくりだしたのは私たちでもあることを自覚しながら、原発事故のゆくえを、ただ解決のみを祈って見つめている日々です。
by seibi-seibi | 2011-04-04 12:34 | Comments(0)

春期講習のようす

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春期講習ももう最後の課題まで来ています。
これはその前の、春期講習恒例、「粘土」です。
粘土は、それはもう、体力だったりします。
まずはからだを使って、粘土になれる。
立ち上がって練っていく中で、粘土を扱う姿勢もできてきます。
そんな、かなりフィジカルな部分もあるので、
からだと眼を使って、作っていきます。
しだいに夢中になると、楽しくて、いい緊張感が漂います。

先月は、「震災」「原発」と文字通り未曾有の事態が発生しました。
いまこうやって、作品作りに没頭していられる、
それだけでも幸福なのだろうと、生徒を見ながら考えています。
このような、不測の事態であるからこそ、
創造性を復権させなくてはならないとも思います。
想像力と創造性は、モノに支配されない、
人間の創りだせる、もっとも根源的なものなのですから。
by seibi-seibi | 2011-04-01 09:39 | Comments(0)