神々は細部に宿る
描くことは、つまり見ることです。
ところがこの、「見ること」が、意外とできないのです。
なぜか。
それは、日常生活では、そこまでつぶさに見たり、観察する必要性がないからです。
りんごを食べるのに、何時間もりんごを見続ける必要はない、ということです。
ところが、こと「描く」となれば、徹底的に見て、理解してから写さなくてはなりません。
いやというほど身続けなくてはなりませんし、これがとても辛いものです。
見ていたからといって、的確に引き写せるわけではないからです。
一学期は、この見続けて、観察するための眼を養うことに軸足を置いています。
ちょっと遠回りのようですが、あとでこれが効いて聞きます。
逆に言えば、これができていないと、あとで描けないとか、自信がないとか、そういう話になります。
よく見ることを訓練するため、さまざまな描法を試みます。
油絵科では、テンペラで細密に描く演習を行っています。
支持体もつくり、顔料と卵混ぜて、色材をつくり、さながら大学での演習と変わりません。
時間もかかります。
ただ、細部にまで迫っていく訓練として、テンペラで描いています。
油絵に戻ったときにも、細部まで描けるようにするためです。
全体を見ながら細部にまで気を配ること。それが完成度を高めます。