大切なことは 2

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模倣と創造

 前回は、観察を通じて、実感を持ちながら描く、作ることについて書きました。
 今回はそのうえにたって、模倣という問題について考えてみたいとおもいます。

 模倣とはつまり、まねることです。
 このまねるという言葉には、少々軽薄さがつきまといますが、
 そもそも芸術活動のほとんどは、時間的に先行した、秀でた作品の模倣からはじまるのは、
 言うまでもありません。
 プラトンやアリストテレースの「ミメーシス」を引用するまでもなく、
 古来より模倣は芸術活動の本質のひとつであったのです。

 作品を作り出すに当たって、いや、初歩的なデッサンや構成・絵画技法等を理解するに当たっても、
 先行する作品を鑑賞し、よしあしを吟味し、その技術を体得するのは、
 技法研究の側面からも当然の方法です。



 セイビではじめて学ぶ高校生たちにも、デザインアイコンになったプロダクト品や
 グラフィックを見せています。それは優れた作品に触れて、そのよさを感じてもらうためです。
 憧れのデザインや、画家、工芸家、建築家、を発見してほしいからです。
 それらの作品に宿る先進性や精神を感じてほしい。常々、そう願っています。

 良い作品には、時代を画した革新性と独創性が内在しており、
 それがある種のオーラとなって、訴えかけてきます。
 感動もするし、驚きもある。
 このような作品の、そのスピリッツを吸収するためにも、模倣はひとつの学び方でしょう。
 先人の残したものから学んだ知識を、自分のものとしていくわけです。
 
 ただし、はじめから無自覚に模倣するのはどうかとおもいます。
 まずは、自分で作ったり、試行錯誤したりして、作り出すことの実感を知ってから、
 良い作品を研究してほしいのです。
 もし、作り出すこと、描くことの実感の上において、研究 模倣を行うのであれば
 なにが本当に自分らしいのか、なぜ、その作品が賞賛されているのか、
 自分の創造過程と照らし合わせて、かんがえられるはずです。
 自分の核となるもの、心棒となるものを持たないまま、
 ただ、人の作品のみを研究するのは危険です。
 なぜなら、その作品に頼ってしまうからです。
 そうならないためにも、自分で見て、観察して、苦労して描き、作り出すことを
 まず最初に行い、それを自分の中心となる軸にすえてほしいのです。

 現実、美大受験などの場合、これはかなり難しい問題です。
 合格しようとすれば、どうしても「優秀作品」が気になります。
 その「優秀作品」に至るのには、紆余曲折があったにもかかわらず、
 早く結果をだしたい、不安な受験生は、ともすればコピーすることに軸足を置きやすいのです。
 まだ捉え方の基本も判らないにもかかわらず、
 はじめから、「どうすれば近道か」と考えるとき、「観察」はおざなりになり、
 自分の核となる、心棒を喪ってしまいます。
 困難にぶつかったときに、還る場所。基盤になるもの。
 それは、よく見て描く、考える、観察する、といった、
 ほんとうに簡単な、けれども大切なことにあるのです。
 これから美術を、美大を目指す高校生たちに、
 このことだけは伝えておきたいとおもいます。
 
 つづく

 
by seibi-seibi | 2015-09-04 15:56 | 芸大 美大受験 | Comments(0)


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