チュニジアへ パウル・クレーの旅

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夏期講習も始まって三日目になります。いまが夏休みの一番暑い時期かもしれません。夏休みには旅行に行ったり、里帰りする人も多いでしょう。一年でいちばん旅行の機会が多いこの季節。今日は画家と旅行について書いてみましょう。
パウル・クレー(1879-1940)は20世紀を代表する画家の一人です。彼の絵をあしらった絵本なども発売されていますから、なじみのある画家だろうと思います。色彩豊かな抽象画やユーモラスな人物像。彼が描いた世界は色彩にあふれています。しかし、はじめから色彩を用いて描いていたのではなく、1914年のチュニジアへの旅行のあと、色彩に目覚めたといわれています。f0234596_17195739.jpg
チュニジアの旅行前、クレーはもっぱら、モノトーンによる絵画表現の追求をしていて、そのころは色は用いていません。それがチュニジアに行って、いっぺんに変わってしまう。色彩に開眼していくのです。
クレーの旅はジュネーブから始まります。汽車に乗ったクレーと一行は、一路フランス南部のリヨンまで行きます。そしてローヌ川沿いにプロヴァンスをめざし、南仏海岸のマルセイユに到着。マルセイユから船でサルディニア島に渡り、ここから北アフリカのチュニジアへ。3日を要した大旅行の末たどり着いたチュニジア。クレーはアフリカの強い陽射しに焼かれ、旅行の高揚感も手伝って、異国の景色と色彩に感動します。当時、ヨーロッパからアフリカまでは遥かな旅といえるでしょう。南下するにしたがって、色彩は強く印象付けられていきます。f0234596_17211898.jpg


最初はサルディニア島で「水と空気の色が、今日は昨日より強烈だ。色彩はさらに激しく燃え、しかもより暗い。」と、クレーを眩暈した色彩は、チュニスでかれを捉えます。そう、文字通り向こうから捉えてきます。「色彩が私を捉えたのだ。もう手を伸ばして色彩を追い求めることはない。色彩は私を永遠に捉えた。私にはそれがわかる」クレーが色彩の画家となったとされる有名なフレーズは、チュニジアの空の下で発せられたのでした。
多くの画家が、このような旅をして、そのさなかに何か確信を掴むことがあったようです。異郷の地にあっての開放感や、エキゾチックな人々と食事。そういったものが渾然一体となって、画家のイマジネーションを刺激していきます。そして絵筆を持ち、描く中で、なにか触発されるものと出会うのです。画家にとって旅行はイメージを広げる画布のようなものです。その途中で出会うすべての事件が、画家をある境地に導くのです。みなさんも旅行に出るときは絵筆を持っていきましょう。旅先でのちょっとしたスケッチも、あととなれば、とてもたくさんの記憶を写した作品になるかもしれません。なにより、イメージを広げられる機会でもあるはずです。夏休みの旅行が実り多いものになるよう、イメージの目を大きく見開いて、さあ、旅に出てください!
(文中引用は「新版 クレーの日記」みすず書房より)
by seibi-seibi | 2010-07-28 17:24 | 人と絵と、イメージ | Comments(0)


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